ふたりとも、年齢が32歳、Webデザイナーとして都内の企業に8年勤めていました。
デザインの仕事は好きでしたが、
「これから子育てしながら、一生この会社で働くのだろうか・・・?」
と考えると、未来が描けませんでした。
同じ頃、第一子を妊娠し、産休・育休に入りました。
育休中に「ひとり起業」という働き方に出会いました。
それまで経営やビジネスについて学んだことはありませんでした。
商品なし、顧客なし、人脈なし。
何もないところからのスタート。
それどころか、管理職経験もなく「指示待ち」の従業員マインドだった分
マイナスからのスタートと言ってもいいかもしれません。
それでも、
「子どもを育てながら、デザインの仕事を続けたい!」
と決意し、独立しました。
ふたりは37歳になり、2人目の子どもが生まれ、相変わらず子育てと仕事に邁進していました。
ひとりは、独立後
「私にはまだまだスキルが足りない・・・」
と言い、さらなるスキルアップのためにデザインスクールに通いました。
今はクラウドソーシングで、仕事を受注しています。
バナー1個の相場は3000円ほど。
月に30個作っても、売上は9万円にしかなりません。
常に新規集客に追われていました。
ある時はクライアントから、夜の20時にこんなメールが届きました。
「【至急】明日の朝までにこの部分を修正してください」
また別のクライアントからは
「すみません!上司に見せたらNGが出たので、やっぱり前のデザインに戻してください」
顔も知らない相手からの、理不尽な要求に振り回されてばかり。
「早く寝てくれ」とイライラした気持ちで、子どもたちを寝かしつけた後、再びパソコンを立ち上げ、深夜まで作業をする毎日でした。
休日も、納期が迫っている案件が頭から離れず、子どもたちが寄ってきても、「あとでね」「ちょっと待ってね」と空返事を繰り返していました。
一方、もうひとりは違いました。
一度デザインを担当すると、長くリピートしてもらえるので、新規営業はほぼしていませんでした。
相思相愛のクライアントばかりで、人間関係のストレスを感じることもありませんでした。
「あなたにお願いしたい」と人柄ごと価値を認めてもらえ、クライアントから頼られる唯一無二のデザイナーになっていました。
枝葉のデザイン作業をするだけではなく、クライアントの事業の全体像を把握したうえで、関われるので、やりがいもありました。
仕事をするのは子どもたちが保育園に行っている間だけ。
充実感いっぱいでお迎えに行きます。
夜は子どもたちと一緒に21時に寝ているので、寝かしつけでイライラすることもありません。
休日は家族で公園へ行って遊び、夜は夫と録りためた海外ドラマを見るのが楽しみでした。